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中国占術の基本構造

中国占術の系譜

おもな中国占術

中国占術の基本構造

 中国占術は、詰まるところ、陰陽と五行の二つの思想、十干と十二支と九宮(九星)の三つの要素、そして、無窮の天体の運行を表現した唯一の太陰暦(旧暦)などから、整然と組み立てられているように、私は思います。
 そこで、それぞれ、二つの思想、三つの要素太陰暦(旧暦)に分けて、私の理解している範囲で、少しご説明してみましょう。

二つの思想

 この陰陽と五行の二つの思想は、古代中国の宇宙観を表現したものとして、すべての生活の根本原理ともなりました。

 

陰陽

 陰陽思想は、相対世界であるこの世を把握するための基本的な概念で、陰がマイナスまたは数字の0であるとすれば、陽はプラスまたは数字の1であるというように、すべてを二元的に分解しようとするものです。
 それを応用する時、たとえば、兄弟の兄を陽と考えれば、弟は陰となります。
 たとえば、人間の生活に最も重要な二つの星に適用すれば、かたや太陽の陽にたいして、もう一方の月は陰なのです。(かつては、その概念通りに、月は"太陰"と呼ばれていました)
 また、季節の推移も陰陽で把握され、暦には、陽の期間と陰の期間が明示されることになります。

 さて、陰陽を数字的にとらえたとき、これは、コンピュータの二進法と同じ内容を表現していることにほかなりません。

 中国には古来、下から上へ三個積み上げた陰陽の組み合わせのセット (このセットを"卦"といい、"け"あるいは"か"と読みます) があり、それを、八種類の事象や様態を表現するのに使用してきました。
 この「卦」の構成要素であるそれぞれの陰陽は、専門的には「こう」と呼ばれるのですが、ちょうどコンピュータ用語のビットのようなものと考えることができます。つまり三つの「こう」によって、「卦」ぜんたいでは、三ビットの情報量を持つことになり、もし数字に置き換えるなら、1~8、あるいは0~7を表現しているともいえます。
 これが、いわゆる「当たるも八卦、当たらぬも八卦」でおなじみの、「八卦」の起こりです。

 この八卦は、八つの方位などを直接的に表現するほか、占いの象意 (占いの結果としての、暗示されている概念、とでもいうのでしょうか) を表現するものとして活用されるようになりました。
 もっとも、占術の場合には、さらに、二つの「卦」を上下に配置して組み合わせ、全体で、六ビットつまり六十四種類の情報を表現させる、いわゆる「六十四卦」の形で活用されることが多いようです。

 ちなみに、基本八卦は次の通りです。(ここで、陰陽の組み合わせは、下から上方向へ表現しています)

☰ 陽・陽・陽 天卦(てんか) または 乾卦(けんか)
☱ 陽・陽・ 沢卦(たくか) 兌卦(だ か)
☲ 陽・・陽 火卦(か か) 離卦(り か)
☳ 陽・ 雷卦(らいか) 震卦(しんか)
・陽・陽 風卦(ふうか) 巽卦(そんか)
・陽・ 水卦(すいか) 坎卦(かんか)
・陽 山卦(さんか) 艮卦(ごんか)
地卦(ち か) 坤卦(こんか)

 

 また、六十四卦は、上側にある八卦 (これを"上卦"といいます) と、下側にある八卦 (これを"下卦"といいます) の組合せになりますので、ごく一例をあげますと、次のようになります。

(上卦) (下卦) (六十四卦)
天天 ("乾為天")
火山 ("火山旅")
風雷 ("風雷益")
         etc.

 

五行

 五行思想は、夏の国の聖王といわれた禹(う)が、国を治める基本とすべく考え出した五つの原理が、後に、五つの惑星と結びつき、さらに、万物の性状形態などの分類に、積極的に応用されることによって確立したとされるものですが、本当のところよくは分かっていません。
 ただ、中国思想の根幹をなしたものであるには違いなく、その影響を受けて、日本においてもたとえば、五臓六腑、五穀豊穣、五節句、五感などなどの言葉の中に、今なおその五行の名残が見られるところです。

 五行とは、次の五つをいいます。

   (もく)  (か)  (ど)  (ごん)  (すい)

 しかし、この五行は、この世 (宇宙、自然界) を形成する基本となる、それぞれ相異なる働きを持った原理のようなものを、自然界の事物を借りて、分かりやすく概念化したものですから、木 (もく) を例にとっても、それはかならずしも、樹木の木 (き) そのものや、ましてや木 (き) だけを意味しているわけではないのです。
 つまり、分類上の一種の符号のようなもの、なのです。ちょうど、「石橋」さんという名前の人物が、石の橋と無関係であってもなんら構わないように。

 また、天空に浮かぶ五つの星、つまり、木星、火星、土星、金星、水星そのものの名前からつけられたものでもないでしょう。
 なぜなら、古代には、それぞれの星は、今呼ばれているようなこれらの名前では、呼ばれていなかったからです。
 ただ、五行が着想された段階で、人間が普通の状態で確認できるこれら五つの惑星が、大いなる啓示を与えたということは、ひょっとしてあったのかも知れませんが。
 ちなみに、五つの惑星はそれぞれ、かつては次のように呼ばれていました。
   木星-歳星(さいせい)、火星-熒惑(けいわく)
   土星-塡星(てんせい)、金星-太白(たいはく)
   水星-辰星(しんせい)
 なお、太陽と月が、これらの惑星とは比べものにならないほどに、人間にとってもっと根源的な存在であったことは、上記の陰陽の項でも、少し触れさせていただいたとおりです。

 

 このほか、この五行思想では、万物は無限に循環して、生成、変化、消滅、を繰り返すものだという考え方によっており、そこから、相生 (そうしょう、そうじょう) の理論と、相克 (そうこく) の理論が生まれています。

 まず、五行相生というのは、生み出したり、変化したり、場合によっては発展をとげたり、という関係のことです。
 具体的には、「木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ずる」と述べられている関係をさします。
 すなわち、木-火-土-金-水-木-火・・・の無限に続く循環の中で、すぐ右に隣り合う五行に向けての関係をさすのです。
 ほんらい、生まれたり変化すること自体は、かならずしも良し悪しとは関係ないものですが、いつの間にか誤って、相生は吉の良い関係を意味する、と理解されてきました。
  よく「相性がよいから」などといわれる場合の相性は、良い意味に考えられたこの相生という言葉から派生した、ともいわれています。

 これにたいして、五行相剋というのは、最初は五行相勝 (そうしょう) と書かれたものでした。ところが、相勝は、同じ「そうしょう」という読みをする相生と区別がつきにくいので、相克 (そうかつ) となり、さらに相剋と改められたそうです。
 もとの勝というのは、たしかに相手に「まさる」ということですが、ここでは、相手を打ち負かすとか駄目にするなどの、きびしい優劣の掟をいったものというよりは、もっと広い意味での、大きな影響を及ぼすとか、強く働きかける、ということなのでしょう。
 つまり、五行相勝とは、ある意味で単調な循環の法則の途中に位置して、新たな変化を生み出したりするために必要な、ターニングポイントとなる事象、ないしは契機とされるような働きかけの関係、を意味するものだったように思われます。
 そして、具体的には、「木は土に勝り、火は金に勝り、土は水に勝り、金は木に勝り、水は火に勝る」と述べられています。
 すなわち、木-火-土-金-水-木-火・・・の無限に続く循環の中で、一つおいて右隣りの五行(たとえば、木なら、火をおいた右側の土をさします)に向けての関係をさすのです。
 ほんらい、この働きかけ自体も、かならずしも良し悪しとは関係ないものですが、これまたいつの間にか、相勝 (相剋) は凶の悪い関係を意味する、というふうに理解されてきました。
  それは、最終的に落ち着いた相剋の「剋」に、害う (そこなう) という意味が強かったせいであろう、といわれます。

 

(続く)

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