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予言の事例
予言の事例
ここでは、予言の事例を、たったひとつだけではありますが、ご紹介したいと思います。なお、予言詩の訳文については、「大予言者ノストラダムスの謎」のものを、そのまま引用させていただきました。
アンリ二世の死
1559年夏、フランス国王アンリ二世の妹マルグリット・ド・フランスは、サヴォア公と結婚し、その祝賀で、国中は沸き立っていました。
その最後の大イベントが、馬上での武技を競う、御前槍試合でした。1559年6月30日、パリの街中で行われたこの晴れがましい「決闘」ショーに、腕にいささか覚えもあるアンリ二世は、自らの槍を手にすると、ごく軽い気持ちから参加します。
三番勝負で、王はまず義弟サヴォア公を、次いでギーズ公をあっさりと打ち負かせます。おそらく花を持たせてもらったのでしょうが、これに気をよくした王の最後の相手は、スコットランド国軍の儀仗隊長であった、きまじめなガブリエル・ド・モンゴメリー伯がつとめました。
その結果は定かではありませんが、モンゴメリー伯の槍の一部が傷つき裂けてしまうほどの熱戦にもかかわらず、勝負がはっきりとはつかなかった、ものと思われます。というのも、国王は、自らのプライドにかけてか、すぐ、再度の手合わせを申し出たからです。
王の疲労を気づかい、何かしら不吉な予感にもおそわれて、しきりに引き留める側近の忠告を無視して、アンリ二世は、また馬上はるかに、モンゴメリー伯と向き合います。そのような王に、あたかもせかされるように、モンゴメリー伯の方も、直前の試合の出で立ちと槍をそのままに、ふたたびの勝負に臨みます。
そして二人は、お互いめがけて馬を突進させ、頃合いを見て、槍をくり出したのです。
悲劇は、瞬時に起きました。
モンゴメリー伯の槍の裂けた木の柄が、王の顔面を直撃し、次いで堅牢な防御の兜の金のマスク (お面) を撃ち破ってしまったのです。木のささくれは眼球に深く突きたち、見る間にあふれ出る血は、とめどなくしたたり落ちて、なお気丈にも自ら馬を引き返してゆく王のよろめきをなぞるがごとく、馬場に点々とその痕を残したといわれます。
侍医たちの必死の治療にもかかわらず、王は十日におよぶ苦悶の末、命を落としました。それはまさしく、占星術師ゴーリックがかつて予言したとおりの、「決闘」がもとの「四十一歳の盲目と死」だったのです。
人々はさらに、ノストラダムスの予言の中にも、あいまいながらじつに的確にその出来事を述べたと思われる、四行詩の一節を再確認し、いまさらながらに戦慄を禁じ得ませんでした。
それは、次のような、第一章の35の予言なのです。
若い獅子が 老いたる獅子を打ち負かす
野試合の一騎討ちの果てに
金のかごの中で「目」を突きさされ
二つの傷は一つになり痛ましい死が来る
ここで、獅子は、スコットランド軍の紋章をつけたモンゴメリー伯を暗示し、同時に、占星術上は、フランス
(フランス国王) をも暗示するものだそうです。金のかごは、マスク
(お面) の形状の比喩となっています。ただし、「二つの傷は一つになり」
の箇所だけが、いくらか意味不明だといわれているのですが。
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